『脳科学からみる子どもの心の育ち 認知発達のルーツを探る』
乾 敏郎著 ミネルヴァ書房 2013
本屋で偶然手にした本だった。この偶然を感謝したいと激しく思うほど有益な衝撃を受けた。人の認知機能がどのように発達し、それぞれの機能が関わり合いシステムとしてはたらいているのかを知った。何も気にせずに日々していることの元にある脳機能について、「なるほど」「だからそうなのだ」と合点がいった。
たとえば「見る」ことについては、「ものが見える」ことやそれが「立体に見える」という、あまりにも自然にでき、意識するに至らないことの仕組みやその発達について研究をもとに丁寧に説明される。
「ものに向かって手を伸ばす」ということはどんなしくみで可能になっているのか、赤ちゃんはどうしてそれができるようになるのか。視線を制御することが自己意識につながること。私たちがごくごく当たり前と考えてしまう機能についての発達、システムについて理解できた。
さらには自閉症(自閉症スペクトラム)や発達障害の特性である「感覚過敏」「感情の調整」「睡眠」「コミュニケーション」「共感」についても説明されている。
感覚過敏で帽子をいやがる子に「何度もかぶれば慣れる」という方法は最適な方法とは言い難いとわかり、「学校では帽子をかぶることになっているんだよ」という理屈の説明にも効果は期待できないこともわかる。
自閉症、発達障害のみならず、精神科的な様々な症状が脳機能、脳構造、神経ネットワークの問題にあるのならば、そこにアプローチすることが求められる。「脳にどう働きかけるか」「神経ネットワークに変化をもたらすにはどうすればいいのか」を考えていくことが必要なのだ。
しかし、誰にでも有効な方法というものはないようである。ひとりひとりに適した方法、個別のアプローチを構築しなければならないと思うのである。
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